㊴『ミセスグリーンアップル』

ミセスグリーンアップルのDVDを買った日のことを、いまでも少し胸の奥で反芻している。手元に届いた瞬間はあんなに嬉しかったのに、いざ観ようとすると、なぜか身体が固まってしまう。 「幻聴の祈り」が頭の中でざわつき、再生ボタンを押す指先がためらう。 それでも、途中まで観られた自分を褒めてあげたいと思う。あの一歩は、確かに前に進んだ証だから。

ステージの雰囲気は、やっぱりミセスらしい。 カッコよくて、センスがよくて、どこか大人っぽい。 「嘘じゃないよ」のサビが流れた瞬間、胸の奥がふっと軽くなる。 ああ、やっぱり好きだな、と素直に思える。 音楽って、こういうふうに心の奥をそっと撫でてくれるから不思議だ。

一方で、アシッドブラックチェリーのDVDはまだ封を切れずにいる。 お金を払ってあるのに、観られなかったらどうしようという不安が、じわじわと胸を締めつける。 高かったぶん、余計に怖くなる。 「観れなかったら最悪だ」と思う気持ちと、「でも観たい」という気持ちが、静かに綱引きをしている。

それでも、私は知っている。 音楽は逃げないし、DVDも私を責めたりしない。 ただそこにあって、私が観られる日を待っているだけだ。

いつか、心がふっと軽くなる瞬間が来る。 そのとき私は、きっと大画面でミセスのステージを観るだろう。 光と音に包まれながら、「ああ、やっと会えた」と思うのだろう。

その日を楽しみにしている自分がいる。 それだけで、今日は少しだけ前を向ける。