㉚『不審者』

2025.7.10

今朝、グループホームの近くで不審者が出たという知らせが、さいたま市のLINEと放送で流れた。 「近く」という言葉が、こんなにも心をざわつかせるものだとは思わなかった。 窓の外はいつもと変わらない朝なのに、空気だけが少し冷たく感じる。

私は実家にいたころから、不審者がよく出る地域に住んでいた。 さいたま市といっても田舎のほうで、のどかだけれど、時々不安が顔を出す場所だった。 露出する人がいたり、誰かが襲われそうになったり、足を傷つけられた人がいたり……。 そんな話を聞くたびに、周りの景色が少しだけ色を失っていくような気がした。

そして、私自身にも忘れられない出来事がある。 高校生のころ、自宅の近くで自転車に乗っていたとき、突然、後ろからすごい勢いで追いかけられた。 あのときの風の音、心臓の音、ペダルを踏む足の震え。 全部が今でも思い出せる。 必死で逃げて、なんとか振り切ったけれど、もしあのとき車が来ていたら……。 もし壁にぶつかっていたら……。 そんな「もし」が頭の中で何度もよぎる。 あれは本当に、運が味方してくれた瞬間だった。

だからこそ、今日の「刃物を持って歩いている人がいる」という知らせは、胸の奥に重く沈んだ。 自分の生活圏のすぐそばで起きていることだと思うと、どうしても不安が膨らんでしまう。 外に出るときの足取りが、いつもより慎重になる。

でも、こういうときこそ、周りの人の存在がありがたい。 グループホームのスタッフさん、近所の人たち、そして家族。 誰かが気にかけてくれていると思うだけで、少しだけ心が落ち着く。

早く安全が戻ってきてほしい。 そして、誰も傷つかずに済んでほしい。 そんな願いを胸に、今日の出来事を静かに受け止めている。