【53】びようしつ

髪の毛が中途半端に伸びてきて、そろそろ切りに行きたいと思っている。 後ろ髪が肩に触れるたび、なんだか落ち着かなくて、邪魔だなと感じる。 鏡を見るたびに、伸びた部分と、薄くなった部分が同時に目に入ってくる。
円形脱毛症になったときのことを思い出す。 あのときは三つ、小さめの丸が頭にできていた。 ストレスなのか、体の反応なのか、理由は分からないまま、ただ「またかな」と思う瞬間がある。 最近は髪の毛がよく落ちる。 排水口に溜まった髪を見るたび、胸の奥がざわつく。
薬があれば少し安心できるのに、と思う。 ウィッグも欲しい。 でも今は生活で精いっぱいで、次の障害年金まで待つしかない。 貯金もしなくてはならない。 未来の自分が困らないように、少しずつでも蓄えておきたい。
父や母がいなくなったら、自分はちゃんと生活できるのだろうか。 そんな不安がふとよぎる。 それでも、今そばにいてくれる両親の優しさに、救われている自分がいる。 優しい両親で良かったと、心から思う。
髪を切りに行くという小さな予定の裏側には、こんなにもたくさんの気持ちが詰まっている。 髪の長さだけじゃなくて、生活のこと、体のこと、未来のこと。 全部まとめて抱えながら、それでも私は今日を生きている。


